この記事は Apache Drill Advent Calendar 2015 の24日目の記事です。
今回は、Drill のセキュリティを向上させる2つの機能、インパーソネーションとユーザ認証について紹介します。
インパーソネーション
Drill には、クライアントから要求されたアクションを、クライアント自身の権限で実行する「インパーソネーション(Impersonation)」機能があります。デフォルトでは無効になっていますが、設定ファイル conf/drill-override.conf を編集して有効にすることができます。
インパーソネーションが有効になっている場合、Drill はユーザーの認証情報(Credential)をファイルシステムに渡し、ファイルシステムはそのユーザがデータアクセスに対する適切な権限を持っているかのチェックを行います。逆にインパーソネーションが無効になっている場合、Drill はすべてのクライアントからの要求を、Drillbit サービスを起動したユーザの権限で実行することになります。Drillbit を起動するユーザは通常は特権ユーザですが、この場合クライアントのユーザごとの細かいアクセス制御ができないことになります。
インパーソネーションを有効にするには、次のように設定ファイルを編集し、Drillbit を再起動します。
$ vi conf/drill-override.conf
drill.exec: {
cluster-id: "cluster_name",
zk.connect: "<hostname>:<port>,<hostname>:<port>,<hostname>:<port>",
impersonation: {
enabled: true
}
}
下記の表は、Drill のどの機能がインパーソネーションに対応しているかを示しています。
タイプ | 対応機能 | 非対応の機能 |
---|---|---|
クライアント | SQLLine, ODBC, JDBC | Drill Web コンソール, REST API |
ストレージプラグイン | ファイルシステム | Hive, HBase |
クエリ |
インパーソネーションが有効のとき、設定はデータとメタデータ両方のアクセスに適用されます。例えば、SHOW SCHEMAS コマンドを発行した場合、Drill はログインしたユーザの権限でメタデータにアクセスを試みます。また、ワークスペースに対する SELECT クエリを発行した場合は、ログインしたユーザの権限でデータにアクセスを試みます。インパーソネーションが適用されるコマンドは次の通りです:
CREATE TABLE AS SELECT および CREATE VIEW コマンドを実行するには、ユーザはテーブルやビューを保存するディレクトリの書き込み権限を持っている必要があることに注意してください。 |
ユーザ認証
一方で、ユーザを正しく識別するためにはユーザ認証が欠かせません。Drill では Linux PAM(Pluggable Authentication Module)によるユーザ名/パスワードをベースにした認証をサポートしています。認証は JDBC/ODBC 接続を介して行われます。PAM はインストールされたどの PAM 認証エンティティにも対応するため、ローカル OS のパスワードファイルはもとより LDAP などにも幅広く対応します。
もしインパーソネーションが有効になっていれば、ユーザ認証と併用することで、どのユーザがどのファイルにアクセスできるかということを制御できることになり、Drill システム全体のセキュリティが向上します。
PAM を利用したユーザ認証を行うには、すべての Drill ノードでユーザのユーザ名、UID、パスワードが一致している必要があります。また、/etc/passwd を使う場合には、Drillbit を起動するユーザはすべてのノードで shadow グループに所属している必要があります。
それでは、PAM 認証の設定の手順を追っていきます。まず下記のサイトから Linux 用の JPam をダウンロードします。
http://sourceforge.net/projects/jpam/files/jpam/jpam-1.1/
tar.gz を展開し、libjpam.so を取り出してどこかのディレクトリに配置します(例えば /opt/pam)。そして conf/drill-env.sh を編集して libjpam.so があるディレクトリのパスを次のように指定します。
$ vi conf/drill-env.sh export DRILLBIT_JAVA_OPTS="-Djava.library.path=/opt/pam/"
さらに conf/drill-override.conf に次の設定を加えます。
$ vi conf/drill-override.conf
drill.exec: {
security.user.auth: {
enabled: true,
packages += "org.apache.drill.exec.rpc.user.security",
impl: "pam",
pam_profiles: [ "sudo", "login" ]
}
}
これで Drillbit を再起動すれば、ユーザ認証が有効になります。
sqlline を使うクライアントからアクセスするには、次のようにユーザ名(-n オプション)とパスワード(-p オプション)を指定します。
$ sqlline –u jdbc:drill:zk=10.10.11.112:5181 –n bob –p bobdrill
もしパスワードを隠したい場合には、sqlline に入った後に !connect コマンドで接続します。
$ sqlline sqlline> !connect jdbc:drill:zk=localhost:2181 scan complete in 1385ms Enter username for jdbc:drill:zk=localhost:2181: bob Enter password for jdbc:drill:zk=localhost:2181: *************
最後に、Drill の特権ユーザについて説明を加えておきます。ユーザ認証を有効にした場合、Drill の特権ユーザのみに次のような操作が許されることになります。
- ALTER SYSTEM コマンドによるシステムレベルのオプションの変更
- REST API もしくは Web UI によるストレージプラグイン設定の変更
- すべてのクエリプロファイルの閲覧
- すべての実行中のクエリのキャンセル
特権ユーザは次のうちのいずれかです。
- システムオプション security.admin.users で指定されたユーザ(ALTER SYSTEM にて変更可能)
- システムオプション security.admin.user_groups で指定されたグループに所属するユーザ(ALTER SYSTEM にて変更可能)
- Drillbit を起動したユーザ